死亡事故/死亡逸失利益

死亡逸失利益

 

 死亡逸失利益とは、将来得られたであろう収入から、事故による死亡のため、得られなくなった収入の事をいいます。計算式は以下の方法で算定します。

 死亡逸失利益の算定方法は以下のとおりです。

・基礎収入※1×(1-生活費控除率※2)×就労可能年数に対応するライプ ニッツ係数  

 (※1)基礎収入額は原則として、事故前の現実収入額です。

 (※2)生活費控除率は、被害者の家庭内の地位に応じて、原則、30%~50%の範囲内の数値を認定しています。

 

 以下では、死亡事故に遭い、逸失利益を計算する際の注意点等をQ&A方式で紹介します。

 

Q1

  基礎収入は原則として事故前の給与額によると聞きましたが、この給与額とは税金等を控除した後の額のことをいうのでしょうか。

 A

  いいえ。いわゆる税込金額を基礎とします。

  なお、給与額には、本給のほか、歩合給・各種手当・賞与等を含みます。

※事故後に昇給が生じているような場合は、適宜調整計算した金額を使用する必要があります。

 

Q2

 死亡時の収入額が低い場合であっても、その収入を基礎に逸失利益の算定がなされるのでしょうか。

 いいえ。

 将来賃金センサスの平均賃金程度の収入を得られると認められれば(ex,被害者が若年の場合)、賃金センサスの平均賃金額を基礎とすることが可能です。 

 

Q3 

(死亡による逸失利益算定の際における)中間利息の控除率について教えて下さい。

 年間5%とされています。

 なお、年5%の控除利率の是非が論じられることがありましたが、最高裁(平17.6.14)は、中間利息控除は法定利率により行うべきだとしたため、基本的には、控除利率を5%とすることで決着がついています。

 

Q4

 まだ就労していない年少者や学生が交通事故により死亡した場合、死亡逸失利益は認められるのでしょうか。

 原則認められます。

 基本的に、高校を卒業する18歳を就労の始期とし、賃金センサスによる全年齢平均賃金額を基礎として算定されます。

 

Q5

 年少者が死亡した際、就労期間に達するまでの養育費は、死亡逸失利益から控除されるのでしょうか。

 控除されません。

 かつては争いがありましたが、控除しないことで実務上決着しています。

 

Q6

  死亡時無職の被害者に死亡逸失利益を認めることはきでますか。

 労働能力・労働意欲があり、就労の蓋然性がある場合には認定できます。                                

 基礎収入は、原則として、失業前の収入が参考にされます。但し、失業以前の収入が平均賃金を下回る場合、平均賃金を得られる蓋然性が認められれば、男女別の賃金センサスによることが可能です。

 

Q7

 事故により死亡した、個人事業者の基礎収入額はどのように算定されますか。

 また、青色申告控除がされている場合の取り扱いについても教えて下さい。

 通常、事故前年の確定申告所得額によって認定します。

 また、青色申告控除がされている場合、同控除額を引く前の金額を基礎とします。

 

Q8

 交通事故により、個人事業者である夫が死亡しました。

 事業収益の全額を基礎に逸失利益を算定することは可能でしょうか。

 事業収益が、資本利得や家族の労務の総体の上に形成されている場合には、事業収益の中に占める被害者個人の寄与部分が逸失利益算定の基礎となります。

 

Q9

 (死亡逸失利益算出の際に)実際には確定申告を上回る収入(所得)があっ たとの主張は認められますか。

 現実の収入状況が立証されれば認められます。

 特に、経営の状況、家族生活の状況などから、生活を維持するのが困難と思われるときは、賃金センサスなどを参考にする例もあります。

 しかし、裁判例の傾向は、かなり確実性のある立証を求める傾向にあるため、確定申告額に基づかない主張が採用されるのは容易ではありません。

 

Q10

 会社役員の死亡逸失利益を算出する際、役員報酬の全額を基礎収入として良いのでしょうか。

 取締役員報酬の全額を基礎収入額とするのではなく、取締役報酬中の労務対価部分を認定し、その金額を基礎として算定します。ただし、事案によっては、取締役報酬の全額、又は、大部分を労務対価部分と認定することもあります(EX、会社代表者である被害者が死亡し会社が廃業したケース、被害者である代表取締役と会社は経済的に一体をなしているから会社から受けていた報酬はすべて労務の対価と認められたケースetc)。

 なお、本人の死亡により企業活動の利益を相続人が承継出来なくなるときには(いわゆるサラリーマン重役等)、役員報酬の全額が基礎になります。

 

Q11

 家事に従事していた妻が交通事故により死亡した場合、逸失利益は認められるのでしょうか。

 認められます。

 家事労働を金銭的に評価し、平均的就労可能年限に達するまでの逸失利益を算定することが可能です。

 

Q12 

 兼業主婦の基礎収入額(死亡逸失利益)算定の際、家事従事者としての収入(女性平均賃金額)に、実収入分を加算することは可能ですか。

 原則として、実収入部分を加算することはなく、女性の平均賃金額のみを基礎収入とします。

 ただし、金銭収入額が平均賃金額以上のときは、実収入額によって給与所得者や、個人事業者等として損害額を算定します。

(なお、金銭収入の喪失が家庭に与える影響が多い等の事情を考慮して、比較的金額が高い年齢別平均賃金を使う裁判例もあります。)。

 

Q13

 年金の逸失利益は認められるのでしょうか。

 A

 国民年金、厚生年金、障害年金等、被害者が保険料を拠出しており、家族のための生活保障的な性質をもつものについては、逸失利益が認められます。

 なお、老齢年金等に属する年金であっても、扶養家族の有無などを理由として支給される加給年金等は、逸失利益算定の基礎収入額から除外されます。

 

Q14

 遺族年金についても逸失利益は認められますか。

 A

 設問のように、遺族年金など受給者の保険料負担のない社会保障的な性質を有するものは、逸失利益が否定されます。     

 

Q15

 年金収入に加えて稼働収入がある場合、生活費控除率はどのように算定されますか。

 稼働収入の逸失利益も認められる場合の損害方法には、主に次の二つの方式があります。

1.稼働収入のある期間は稼働収入との合計額をもとに稼働収入による逸失利益算定の場合の生活費控除率による算定をし、その後の年金収入だけの期間はより高率の生活費控除を行う方法

2.稼働収入の逸失利益と年金逸失利益を分離して、年金逸失利益については稼働逸失利益より高い生活費控除率で算定する方法

 

 以上で述べた内容を簡単にまとめると以下のとおりです。

 (逸失利益の)肯定例

・国民年金

・厚生年金

・障害年金

 

 (逸失利益の)否定例

・遺族年金(受給者に保険料負担はなく、社会保障的な性質を有しているため)

                             以上

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