休業損害
休業損害は、傷害の治癒(あるいは後遺障害の症状固定)までに発生する就労不能ないしは通常の就労ができないことにより生ずる収入減少額を損害として把握するためのものです。ですので、事故に遭わなかったとしても、現実の収入が得られなかったであろう場合は損害の発生は否定されることになります。
ただし、家事従事者のように、もともと現金収入がない者については、別途の考え方をすることになります。
以下では、休業損害を請求する場合に生じる問題点についてQ&A方式で紹介します。
Q1
休業損害の算定の際、どの年度の確定申告所得額が基準になりますか。
A
原則として、事故前年の確定申告所得額が基準になります。
しかし、年度間で相当の変動が認められる場合等前年度の金額で算定するのが不適切だと考えられる場合は、事故前数年分の平均額を利用するなど適当な金額で請求すること可能です。
Q2
年次有給休暇を取得して、欠勤による減給の不利益を回避しました。このような場合、休業損害は認められないのでしょうか。
A
設問のような場合、表面上は減収がないようにも思えますが、実質的には、 被害者の年次有給休暇請求権の行使という擬制によって減収という不利益を回 避したにすぎないことから、休業損害は認められます。
具体的には、
①年次有給休暇手当の支給を無視して休業損害を算定する方法
②財産的損害の発生を否定し、慰謝料で実質的な損害の賠償を行う方法
③年休取得により手当相当額の財産的損害が発生したとする方法
などの方法が挙げられます。
Q3
交通事故の被害者が学生の場合、休業損害の損害は請求できますか。
A
原則として、請求できません。
ただし、アルバイトによって現実に収入を得ている場合は、現実の収入を基礎として休業損害を請求することが可能です。
なお、学生という身分の性質上、就労状況や継続性と、単位の修得・試験の負担などによる減収を考慮し、現実可能な就労予想日数を出して算定されます。
Q4
事故時の仕事が違法業務に当たる場合、休業損害は認められないのでしょうか。
A
原則として、認められます。
但し、その違法業務が公序良俗(民法90条)に反するような場合であれば、休業損害の請求が認められません。
また、適法な業務と比較して、収入の継続性・安定性等の点に問題があるので、損害額が制限される可能性もあります。
Q5
交通事故に遭い、長期間、治療に専念した結果、在学中の大学の卒業時期が一年遅延しました。この場合、卒業の時期を遅延したことによる損害の請求は認められるのでしょうか。
A
設問のケースの場合、就職していれば認められたはずの給与額が休業損害として認められます。
この場合の基礎収入額についてですが、給与額が明確にできるといった事情がないのであれば、学歴計の初任給平均値等が参考になります。
Q6
交通事故に遭い、長期間、治療に専念した結果、内定先への就職の就職の時期が一年遅延しました。この場合、就職の時期を遅延したことによる損害の請求は認められるのでしょうか。
A
設問のケースの場合、就職していれば認められたはずの給与額が休業損害として認められます。
本件では就職が内定しているので、就職先の給与額から損害額を推定することになります。
Q7
死亡事故被害に遭った場合に、休業損害が認められることはあるのでしょうか。
A
はい。事故後、死亡に至るまでの間に休業したのであれば休業損害の請求が認められます。
一方で、被害者の方が即死したケースであれば、休業損害の請求は認められ ません。
以上
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