後遺障害認定の実務(2)

・損害賠償訴訟と自賠責保険会社に対する訴訟

 

 通常の実務の方式としては、自賠責保険会社に対する被害者請求を行い「損害

賠償額」を受領した後の残額を加害者に損害賠償請求することが多いです。 

 加害者が任意保険に加入していれば、加害者との間で勝訴判決を得さえすれば、

判決で容認された金額の支払いは確保されます(ただし、契約保険金額の制限が

あることはもちろんです。)しかし、加害者が任意保険に加入しておらず、且つ

資力が十分でない場合には、自賠責保険会社に対する訴訟を併行して提起してお

くと、現実に支払を受けられる金額を増加させられる場合があります。

 

 死亡事故の場合においては、自賠責保険金限度額未満の支払しかなされていな

い場合です。通常の被害者の場合は、保険金満額が支払われる場合が多いため、

このような方法を採る余地はないですが、場合によっては、判決で容認される金

額が被害者請求で支払われた金額を上回ることもあります。その場合、加害者の

資力がないときは被害者請求で自賠責保険限度額までの支払を受けられないかが

問題となります。自賠責保険会社は判決を尊重して追加支払いをすることが多い

ようですが、欠席判決であることなどによってほとんど争われておらず、通常は

判決で認容されないような内容になっている等の特別な場合には、判決の結果を

受け入れないこともまれではありますが皆無ではありません。このような場合に

自賠責保険会社に再度訴訟を提起するような事態を避けるには、加害者に対する

損害賠償訴訟にとともに被害者請求権に基づく自賠責保険会社に対する訴訟を併

合して提起し判決を得れば、保険金額の範囲内で、残っている金額の支払を受け

られることになります。

 

 後遺障害事案の場合も、死亡事故と同様です。しかし、後遺障害特有の問題も

あります。すなわち、被害者請求などにより認められた後遺障害等級より重度の

後遺障害の存在が訴訟において認定されることもあるからです。この場合は、判

決で認定された等級の保険金限度額まで追加請求が可能になる余地があるから、

もし追加請求ができれば、現実の支払を受けられる金額を増やすことができます。

 しかし、加害者に対する損害賠償請求が認められただけでは、被害者請求によ

る追加請求はできません。追加請求が認められる前提として、まず、判決におい

て後遺障害の等級該当性が認定されていなければなりません。すなわち、被害者

に自賠法施行令2条別表のどれに該当する後遺障害が残ったかを認定せず、ただ

損害の発生を認める内容の判決では、追加請求が認められる保証はありません。

また、判決が等級の認定をしても、自賠責保険会社が判決の認定が妥当性を欠く

として(認定の障害が障害等級表に定められていないのに等級認定されていたり、

その態様の障害では定められていない等級を認定している場合などが考えられま

す。)、その認定内容に従わないこともあります(当然のことではありますが、

被害者と自賠責保険会社との間では、加害者に対する訴訟の結論はなんらの既判

力を有しません)。そこで自賠責保険会社に対する訴訟を同時に提起して、追加

請求ができることを確定させる意味が出てきます。

 

 なお、追加請求を予定するときは、自賠責保険会社を訴訟の被告としていない

場合には、時効にならないよう時効中断申請をしておくことが重要です。 

                                  以上

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