事業所得者・会社役員の休業損害

 以下では、休業損害(事業所得者、会社役員)を計算する際に問題となる点についてQ&A方式で紹介します。

 

Q1 

  個人事業を営んでいる者です。事故にあい、2週間休業しました。ただし、ここ数年確定申告をしていません。このような場合、休業損害は否定されるのでしょうか。

A 

 直ちに休業損害が否定されるわけではありません。

 すなわち、確定申告の有無にかかわらず、相当の収入を得ていたと認められれば、賃金センサスなどを参考に、基礎収入額を認定する例が多々みられます。

 

Q2

  事故の治療の為、1ヶ月程、普段どおりの仕事が出来ず、臨時に人を雇い休業を回避しました。この場合、休業損害は認められるのでしょうか。

A

 はい。休業損害は認められます。

 本来なら不必要な費用と評価できるため、それに要した必要かつ妥当な額であれば、休業損害と認められます。

 

Q3

 交通事故の被害にあいました。個人事業を営んでおります。

 休業中の職場の家賃等の固定経費は休業損害と認められますか。

A

 原則認められます。

 事業を継続する上で休業中も支出を余儀なくされる固定経費(家賃、従業員給料等)は、相当性がある限り休業損害に含まれます。

 

Q4

 休業損害額算定に際し、確定申告額を上回る所得があったとの主張が認められることはあるのでしょうか。

 A

 立証次第で、認められることもあります

 ただし、裁判例は、かなりの確実性がある立証を求める傾向にありますので、確定申告に基づかない主張が採用されるのは容易ではありません。

 

Q5

  確定申告額を上回る基礎収入額が認められるのは、どのような場合ですか。

A

 例として

・確定申告額を上回る収入状況について、かなりの確実性のある立証があった場合

・申告額では生活維持が困難と思われるとき等が挙げられます。

 後者の場合、経営状況、家族生活状況等から、賃金センサスなどを参考に、申告額を上回る基礎収入額が認定されることがあります。

 

Q6
 私は個人で事業を行っていますが、交通事故にあい休業することになりました。ところで、事故前から仕事を妻に手伝ってもらっていましたが、給与は支払っていませんでした。
 休業損害の算定の際、私の申告した所得額を基に基礎収入額を認定することになるのでしょうか。

A 

 本件のように、身内の者を使用しているにもかかわらず、その者に対する相当額の給与支払いがなされていない場合、事業主の所得として申告された額の中には、妻の労務の成果部分が含まれることになります。そのため、所得申告した額に被害者の寄与の割合を乗じたものを基礎収入額とする必要があります。

 

Q7

 交通事故にあった会社役員です。休業損害の算定の際、取締役報酬を、そのまま基礎収入額として算定してもられますか。

A

 会社役員の逸失利益算定においては、役員報酬中の労務対価部分を認定し、その金額のみを基礎として休業損害を算定します。

 これは、役員の報酬中、企業経営者として受領する利益の配当部分は、休業により失われないとの考え方によるものです。

 

Q8

 取締役の休業によって、会社自体の営業に支障が生じ、利益の減少等の損失(いわゆる企業損害)があった場合、損害賠償は認められますか。

A

 原則として、企業損害は否定されます。

 これは、企業自体が直接的な加害を受けている訳ではないことなどが理由です。

 ただし、企業規模が零細で、法人の営業活動が取締役個人の営業行為と実質的に同じだという評価が可能な場合には、肯定されることがあります。                              

                                          以上

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