人身事故/後遺障害逸失利益

 後遺障害逸失利益

 

 後遺障害逸失利益とは、将来得られたであろう収入から、事故による後遺症のため、得られなくなった収入の事をいいます。計算式は以下の方法で算定します。

・収入額(年収)×労働能力喪失率×喪失期間に対応するライプニッツ係数

 

 以下では、人身事故に遭い、逸失利益を計算する際の注意点等をQ&A方式で紹介します。

 

Q1

  高齢者にも逸失利益は認められますか。 

 A

 認められることもあります。

 高齢者が就労している場合は当然として、その他にも、

・(家族のために)家事に従事している場合

・就労の蓋然性が認められる場合

などの場合に、逸失利益が認められています。

 

Q2

 高齢者の労働能力喪失期間について教えて下さい。

 A

 被害者が高齢の場合、原則として、67歳までの年数と、平均余命年数までの期間の2分の1のいずれか長い方になります。(※)

 上記を原則としつつ、被害者の性別・年齢・職業・健康状態等の事情を考慮して判断することになります。

 

Q3

 親族が交通事故に遭いました。死亡に至らなかったものの、重度の後遺症を負っています。このような場合、被害者本人の後遺障害慰謝料とは別に、親族固有の慰謝料の請求も認められるのでしょうか。

 A

 事案によりますが、重度の後遺症の場合には、親族にも固有の慰謝料が認められることがあります(例えば、被害者の介護が必要な上位等級の場合に、親族固有の慰謝料が認められる傾向にあります。)。

 なお、このように親族固有の慰謝料が認められる場合の認定水準についてですが、統一的な基準は見出しがたい状況です。

 

Q4

 精神の障害・神経機能障害の場合に、労働能力喪失期間が就労可能年限(通常67歳、高齢者の場合は平均余命の2分の1の年数)(※1)まで認められることはあるのでしょうか。

 A

 精神の傷害・神経機能障害の場合には、脳外傷、脊髄損傷などの器質的な原因が判明しているケースであれは、労働能力喪失期間を就労可能年限まで認める判決例が多々見られます。

 一方で、神経機能の障害として頻発する頸部損傷によるむち打ち損傷については、短期間の労働能力喪失期間が認定される傾向にあります。

 具体的には、後遺障害等級12級(他覚的に神経障害が証明されているケース)であれば5年ないし10年の、後遺障害等級14級であれば5年以下とする裁判例が多々見られます。

 ただし、これらと異なる長期・短期間の労働能力喪失期間を認めた裁判例もみられますので、事案毎に認定する必要性があります。

 

Q5

 交通事故の被害者が事故と無関係の原因で死亡した場合、損害賠償額から、死亡により支出を免れた生活費を控除されるのでしょうか。

 A

 不法行為によって、将来の生活費を免れるという利益を得たわけではない為死亡により支出を免れた生活費は控除されません。

 一方で、将来の介護費用は、その支出の必要性がなくなるので、損害賠償の請求が出来ないものとされています。

 

Q6

 交通事故に遭った後(以下、「第1事故」といいます。)、別個の原因で事故被害者が死亡するに至りました(以下、「第2事故」といいます。)。このような場合、(第1事故による逸失利益の算定の際における)労働能力喪失期間は、死亡時までとされてしまうのでしょうか。

 A

 設問の第1事故の時点において、死亡の原因となる具体的事由が存在し、近い将来における死亡が客観的に予測されていたなどの特段の事情がない限り、第2事故による死亡の事実は考慮せずに、第1事故後生存している場合と同様に労働能力喪失期間を認定することになります。

 

Q7

 交通事故により、重度の後遺障害が残りました。死亡事故の場合と同様、逸失利益算定の際に生活費の控除は行われるのでしょうか。

 A

 原則として、控除されません。

 ただし、遷延性植物状態の被害者(屋外での生活が想定できない場合)のケースにおいて、生活費の控除を認めた裁判例も存在しますが、少なくとも最近の裁判例は生活費の控除を否定する傾向にあります。

 

Q8

 外国人の逸失利益の算定方法について教えてください。

 A

 外国人の中でも在留資格の有無等の事情により基礎収入の認定方法に違いが出てきます。

 仮に事故にあった外国人被害者の方が永住資格を有していたり、在留資格の更新が確実に認められるような場合であれば、基本的に日本国籍者と同様の考え方になります。

 

Q9 

 不法滞在中の外国人被害者に逸失利益は認められますか。

 A

 原則として、認められます。

 ただし、事故後一定期間経過後は、日本国外で就労するものとして、そこで得られるであろう収入水準を推定して基礎収入とすることになります(一般的には、出身国に帰国し、そこで就労することを前提に基礎収入を認定することになります。)。

 注意点として、根拠となる資料に関して困難な問題が多いです。

 

Q10

 自賠責保険における後遺障害等級認定で非該当と判断されました。この自賠責保険の判断は、(後遺障害等級に関する)裁判所の判断をも拘束するのでしょうか?

 A

 いいえ。裁判所は、自賠責保険における後遺障害等級認定に何ら拘束されることはなく、訴訟に現れた全証拠から自由に心証を形成し判断することになります(民事訴訟法247条)。

 ただし、自賠責保険における判断と同様の判断を下す裁判例が多くみられます(もちろん、自賠責保険における判断と異なる後遺障害等級を認定した裁判例もみられます。)。

 

(※)労働能力喪失期間の終期について

・原則→67歳まで。

・年長者→67歳までの年数と平均余命の2分の1のいずれか長いほうを原則としつつ、被害者の性別・年齢・職業・健康状態等の事情を総合して判断されます。                                                           以上

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